自動化に向く業務の見分け方
当てはまる項目が多い業務ほど、自動化を検討しやすい候補です。特に、時間がかかる・属人化している・手戻りが多い業務は、優先度が高くなります。
- 毎回、同じ手順で行っている
- 内容を読んで、仕分けたり要点をまとめたりする工程がある
- 文章、資料、画像などを作る工程がある
- 月に合計5時間以上かかっている(複数人の合計でも可)
- 特定の人しかできない「属人化」が起きている
- ミスをすると、あとの工程で手戻り・確認作業が発生する
- 毎日・毎週・毎月など、決まったタイミングで発生する
この見分け方をそのまま使える無料の自動化候補チェックシート(Excel)を配布しています。業務を書き出して4項目を選ぶと、着手する順番を整理できます。
仕事の内容に合う改善方法を選ぶ
改善の方法は1つではありません。仕事の性質に合わせて、次の3つから選びます。
- 決まった手順を繰り返す仕事:ルール型の自動化
- 内容を読み、整理・作成する仕事:AIによる自動化
- 数字の推移や状況を継続的に確認する仕事:データの見える化
なぜ分けるのか
ルール型の自動化(Power Automate、Power Query、Excelのマクロなど)は、同じ手順をたどれば同じ結果になります。結果が想定と違った場合、原因は手順かデータのどちらかにあり、そこを直せば同じ問題は起きなくなります。
生成AIは性質が異なります。同じ内容を入力しても、出力が毎回まったく同じになるとは限りません。文章の下書きのように答えが1つに決まらない工程では、この性質は問題になりません。一方、請求金額の集計や台帳への転記のように答えが1つに決まる業務をAIだけで処理すると、結果が正しいかどうかを毎回すべて人が確認することになり、確認の作業がそのまま残ります。
そのため、AIを使う工程では、どこまでの出力を合格とするかを先に決め、実際のデータで確認したうえで運用に乗せます。そのうえで、誤りが後工程で気づけるかどうかに応じて、人が最終確認する工程を残すか、例外だけ担当者に引き継ぐ形にするかを決めます。
3つ目の「データの見える化」は、これとは別の軸です。1回の処理を自動化するのではなく、数字や状況を継続的に確認できる状態にすることが目的になります。
どちらに向くかを見分ける3つの質問
- その業務の答えは、1つに決まりますか
- 出力が毎回少しずつ違っても、あとの工程は成立しますか
- 間違いがあったとき、気づける工程が後ろにありますか
1つ目が「決まる」で、2つ目が「成立しない」なら、ルール型の自動化が向いています。逆に、答えが1つに決まらず、人が内容を見て手を入れる前提の工程であれば、AIによる自動化の対象になります。3つ目に「ない」が付く業務は、どちらの方法を選ぶ場合でも、確認の工程を残す形で設計します。
1つの業務の中で組み合わせます
1つの業務に、両方の工程が入っていることがあります。その場合は、どちらか一方を選ぶのではなく、工程ごとに向いている方を割り当てます。
| 工程 | 担当 |
|---|---|
| 読む・仕分ける・下書きを作る | AIによる自動化 |
| 集計する・転記する・帳票やメールとして出力する | ルール型の自動化 |
| 内容を確認して承認する | 人 |
たとえば、届いたメールの内容をAIが仕分けて要点をまとめ、その結果をPower Automateが所定のExcelへ転記し、担当者は最終確認だけを行う、という組み立て方です。正確さが要る工程はルール型に任せ、下書きや一次整理をAIに任せる——この切り分けが、方法を決めるときの出発点になります。
今ある環境で、どこまでできるか
OfficeやExcelなど、今ある環境を優先し、業務に合う方法を選びます。契約内容や必要な機能によって、追加ライセンスが必要になる場合があります。手作業が残る原因がソフトの外にある場合は、最後の表のように現物をつくる方法も採ります。
Microsoftのツールでできること
実際の構成は、データの持ち方、件数、関係する部門によって変わります。下表は検討の出発点として代表的な組み合わせを示すもので、「主に使うもの」は先頭に書いたものが中心になります。
| やりたいこと | 主に使うもの |
|---|---|
| 社内資料を検索・要約する |
|
| 複数資料を比較・整理する |
|
| 規程・制度を案内する |
|
| 会議前の要点を整理する |
|
| 文書の下書きを支援する |
|
| 問い合わせに一次回答する |
|
| メール送信・転記を自動化する |
|
| 売上・在庫を見える化する |
|
| PC上の定型操作を自動化する |
|
| 申請や入力業務をアプリ化する |
|
| アンケート・申請を集めて集計する |
|
| Excelの定型処理を自動化する |
|
| 大量のファイル整理・アカウント管理を一括処理する |
|
| タスクと進捗を共有する |
|
※Microsoft 365の契約がなくても、Excel VBA・Power Automate Desktop・PowerShellの行は、WindowsとExcelがあれば実現できます。
※一部の高度な連携(Premiumコネクタ等)はMicrosoft 365の有償上位プランが必要な場合があります。お見積もり時に、追加費用を抑えた構成でできる範囲を必ず明示します。
Microsoft以外のAIを使う場面
Microsoftのツールで実現できない工程や、ほかのAIのほうが結果がよい工程では、汎用のAIも使います。
| やりたいこと | 主に使うもの |
|---|---|
| 文章の下書き・要約・仕分けを任せる |
|
| 資料の構成案をつくる |
|
| 既製の機能で実現できない処理や、ブラウザで開く画面を、専用ツールとして開発する |
|
ソフトだけでは解決しない場面
手作業や手戻りの原因が、道具や置き場所など現物の側にあることがあります。市販品では合わない場合、必要なものを実測して設計し、その場でつくります。
| やりたいこと | 主に使うもの |
|---|---|
| 治具・部品・試作品を内製する |
|
費用の考え方——「作る費用」と「維持する費用」を分ける
「作る費用」に加えて、ツールの月額課金や保守費など「維持する費用」を分けて確認してください。
市販の自動化ツール(RPA・ワークフローSaaS等)は、1ユーザーあたり月数千円〜数万円の課金が、使い続けるかぎり続く場合があります。3年使えば「月額×36か月」。一方、今あるExcelの機能で作る、ブラウザで開く画面として作るなど、月額のかからない方法で作れば、維持する費用を抑えられます。
逆に、対象が1つの業務に収まり、標準の機能のまま使えて、利用する人数が少ない場合は、市販のサービスのほうが早く始められ、総額でも収まることがあります。人数が増えるほど月額が伸びる料金体系か、見るだけの人にもライセンスが要るか、必要な機能が上位プランにあるかを、契約前に確認してください。
料金だけでなく、いま使っている台帳やシステムとどう繋がるかも確認してください。繋がらない場合、両方に入力する作業が残り、削減できるはずだった時間が戻ってきません。
ただし、AIエージェントや一部の連携機能は、現在の契約内容や利用条件に応じて、Microsoft製品の追加ライセンスまたは従量課金が必要になる場合があります。開発費だけでなく、運用開始後に発生する費用も含めて比較してください。
比較するときは「初期費用の安さ」ではなく、「3年総額」と「削減できる時間×時給換算」を並べてください。月20時間の削減は、時給2,500円換算で年60万円。この条件なら、作る費用が60万円以下であれば1年以内に回収できる計算です。実際の回収期間は、削減できる時間と時給換算によって変わります。
削減時間と投資回収期間の試算には、無料の自動化効果シミュレーター(Excel)が使えます。登録不要でダウンロードできます。
費用の一部に補助金・助成金を充てられる場合があります。ただし制度によって対象が分かれ、自社に合わせて作るシステムは対象外になる制度もあります。使い分けは業務自動化に使える補助金・助成金に整理しています。
社内での進め方(実績のある型)
- 候補出し——第1章のチェックリストで、部門の「面倒な仕事」を3つ挙げる
- 1つ選ぶ——効果(時間×頻度)と作りやすさで、最初の1業務を決める。小さいものでよい
- 作る・測る——自動化して、削減時間を実測する(Before/Afterの数字が次の説得材料になります)
- 見せる——数字と実物を隣の部門・上司に見せる。「うちもやりたい」が自然に集まります
- 広げる——集まった要望に優先順位を付けて、順に自動化。並行して手順書と担当者育成を進める
よくある失敗4つ

失敗1:いきなり大きく作る
「全社の業務を一気にシステム化」は、要件が膨らみ、完成する頃には業務が変わっています。まず1業務を小さく自動化して効果を確かめ、良ければ広げる——遠回りに見えて、これが最短です。
失敗2:業務を変えずに、そのまま自動化する
非効率な手順をそのまま自動化すると、「非効率が高速に回る」だけです。自動化の前に「そもそもこの承認は要るのか」「この転記はなぜ発生するのか」を1段だけ整理すると、開発費も下がり、効果は上がります。
失敗3:作った人しか直せない
担当者の退職や異動で誰も触れなくなった「野良マクロ」「野良フロー」は、どの会社にもあります。手順書を残すこと、可能なら社内の担当者が直せるように育てることまでを、自動化の完成条件にしてください。
失敗4:手段から先に決める
「RPAを入れる」「AIでやる」と手段から入ると、その手段でできる形に業務のほうを合わせることになります。合わない部分は手作業として残り、二重運用になるか、作ったものが使われなくなります。同じ「毎月の集計を自動化したい」でも、答えが1つに決まる処理なのか、判断が挟まるのか、データがどこにあるのかで、向いている方法は変わります。決める順番は「業務 → 向いている方法 → 道具」です。作り直しにかかる費用は、はじめに方法を選ぶ手間より大きくなります。
必要に応じて選べる支援
対象業務の決まり具合に応じて、始める場所が違います。
対象が絞れていない場合
- 投資に見合う効果が出るか、先に見極めたい
- 複数の部門・複数の業務にまたがり、範囲を切り分けられていない
- どの方法が適しているか、実現できるかどうかから確認したい
- 業務手順が文書になっておらず、説明が人によって異なる
- 対象データの保存場所や形式がまだ確認できていない
対象業務が未定の場合は業務改善診断・AI/自動化設計から、対象範囲と検収条件が明確な場合はAI/自動化システム開発のお見積もりから始められます。業務を1つに絞らず、複数の業務についてAI活用を継続的に相談したい場合は、AI顧問(月1回60分・月額22,000円、3か月分前払い66,000円)をご利用いただけます。
貴社の業務に対応できそうか、どんな方法が考えられるか。
原則1営業日以内にメールで回答します。