まず、導入するものがどちらかを決めてください。それだけで、確認すべき制度が絞れます。
| 導入するもの | 最初に確認する制度 |
|---|---|
| 自社専用に作るシステム | 働き方改革推進支援助成金、業務改善助成金(いずれも厚生労働省)。税抜50万円以上の設備投資を伴い、3〜5年の生産性・賃上げ目標を負える場合は、中小企業省力化投資補助金も候補 |
| 市販のパッケージ製品 | デジタル化・AI導入補助金、事業所所在地の自治体の制度 |
| 新製品・新サービスの開発を伴わない、既存業務の改善だけ | ものづくり補助金は対象外。小規模事業者持続化補助金は販路開拓との関連が必要 |
まず押さえる3つの前提
制度を選ぶ前に、補助金・助成金に共通する仕組みを3つ知っておくと、社内の検討が早く進みます。
1. 交付決定の前に発注すると、対象から外れます
ほとんどの制度で、補助対象になるのは交付決定の通知が届いたあとに契約・発注した経費です。「補助金を使いたい」と考えている段階で先に発注してしまうと、あとから申請しても対象になりません。制度を使う可能性があるなら、着手のタイミングを申請と合わせる必要があります。
2. 支払いは後払いです
補助金は、事業者がいったん全額を支払い、実績報告を経てから入金される仕組みです。手元の資金が一時的に出ていくことになるため、金額が大きい場合は資金繰りを先に確認しておくと安全です。
3. 検討期間として2〜4か月を見込みます
公募の締切、審査、採択の発表、交付決定までに数か月かかります。そのあいだ着手できないため、補助金を前提にすると、改善そのものが数か月先に延びます。数十万円規模の改善では、待つあいだの人件費のほうが補助額を上回ることもあります。金額の大小だけでなく、「いつ楽になるか」も含めて比べてください。
※制度の要件・金額・期限は毎年見直されます。申請の前に、各制度の公募要領と公式サイトで最新の内容を必ずご確認ください。
自社専用に作るシステムに使える制度
自社の業務に合わせて作るシステムでも、対象になる制度はあります。数十万円台の案件と噛み合うのは、厚生労働省の2制度です。投資額がもっと大きい場合は、この章の最後に挙げる省力化投資補助金も候補になります。
働き方改革推進支援助成金(厚生労働省)
労働時間の短縮や年次有給休暇の取得を進めるために設備投資を行う場合の助成金です。支給対象となる取組に「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」が含まれます。全業種の中小企業が使える「労働時間短縮・年休促進支援コース」が、業務自動化ともっとも結びつけやすいコースです。
| 対象 | 労働者災害補償保険の適用事業主である中小企業。全ての指定事業場で年次有給休暇の管理簿を作成していること。常時10人以上の事業場は、年次有給休暇の時季指定に関する定めを就業規則に置き、交付申請の前に所轄の労働基準監督署長へ届け出ていること |
|---|---|
| 上限額 | 選んだ成果目標ごとに決まります。①36協定の時間外・休日労働時間数の削減=50万円・100万円・150万円(削減後の時間数などによる)/②年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入=25万円/③時間単位の年次有給休暇と特別休暇の新規導入=25万円。賃金の引上げ・割増賃金率の引上げを行う場合は加算があります |
| 助成額 | 上記の上限額の合計と、対象経費の合計額に補助率を掛けた額のいずれか低い金額 |
| 補助率 | 4分の3。常時使用する労働者が30人以下で、労務管理用ソフトウェア等または労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新を行い、その所要額が30万円を超える場合は5分の4 |
| 申請期限 | 2026年11月30日(予算の上限に達した場合は前倒しで終了します) |
| 窓口 | 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室) |
上限額は成果目標によって25万円から150万円まで幅があります。どの成果目標を選べるかで、使える金額が大きく変わります。なお、乗用自動車・パソコン・タブレット・スマートフォンの導入や更新は、原則として対象外です。
業務改善助成金(厚生労働省)
事業場内で最も低い時給を引き上げ、あわせて生産性を高める設備投資を行う場合の助成金です。システムやソフトウェアの導入も対象経費になります。
| 対象 | 事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金を下回っている中小企業・小規模事業者。地域別最低賃金は例年10月に改定されるため、現在の最低賃金を満たしている事業場も、改定後の金額と比べて対象になります |
|---|---|
| 上限額 | 600万円 |
| 助成率 | 最大5分の4 |
| 条件 | 時給を50円・70円・90円のいずれか以上引き上げること。引き上げる対象は、週の所定労働時間が20時間以上の雇用保険加入者で、雇入れ後6か月を経過した労働者です |
| 申請期限 | 2026年9月1日から、地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日まで |
| 窓口 | 都道府県労働局 |
2つの助成金の選び分け
厚生労働省の2制度は、どちらも助成率が高い一方で、会社側に求められる条件の性質が違います。社内の状況に近いほうを選びます。
| 社内の課題 | 検討する制度 |
|---|---|
| 残業が減らない。有給休暇を取らせられない | 働き方改革推進支援助成金 |
| 最低賃金の引き上げが負担になっている。賃上げを予定している | 業務改善助成金 |
なお、同じ経費で複数の助成金を重ねて受けることはできません。両方の条件に当てはまる場合は、どちらか一方を選ぶことになります。併給の扱いは労働局にご確認ください。
投資額が大きい場合:中小企業省力化投資補助金(一般型)
公募要領が「個別の課題に対して作業工程や事業所の構造・レイアウト等に合わせて、機能、構造、性能等が一品一様で設計・開発された機械装置・システムの導入」を対象としており、自社専用に作るシステムが正面から対象になります。ITツールの登録も支援事業者との共同申請も不要です。
| 補助上限額 | 従業員5人以下で750万円(特例で1,000万円)から、101人以上で8,000万円(特例で1億円)まで |
|---|---|
| 補助率 | 中小企業は2分の1(特例の適用時は3分の2)、小規模企業者・小規模事業者・再生事業者は3分の2 |
| 必須の経費 | 機械装置・システム構築費。単価50万円(税抜)以上の設備投資が必ず1件以上必要です |
| 必要な事業計画 | 業務量が削減される割合(省力化指数)の算定、投資回収期間の根拠資料、3〜5年の計画期間で付加価値額が増加する事業計画 |
ただし負う義務は重くなります。3〜5年にわたる生産性と賃上げの目標が付き、単価50万円以上の設備投資も必要です。「単に汎用設備を単体で導入する事業については、本事業の対象とはなりません」とも明記されています。数十万円規模の改善のために背負う条件ではないため、もともと数百万円以上の設備投資と賃上げを計画に織り込んでいる場合に、その一部として検討するのが現実的です。
市販のパッケージ製品なら使える制度
導入するものが一般に販売されている製品であれば、選択肢は広がります。逆にいえば、次の2制度は自社専用に作るシステムには使えません。
デジタル化・AI導入補助金(旧・IT導入補助金)
2026年1月に「IT導入補助金」から名称が変わり、生成AIを搭載したソフトウェアも対象に加わりました。知名度が高く、AI活用を検討している企業がまず名前を挙げる制度です。
公募要領は「補助対象経費は、IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用とする」と定めています。そしてITツール登録要領は、次のものを登録できないと明記しています。
- 製品が完成しておらず、スクラッチ開発を伴うソフトウェア。過去に特定顧客向けに開発したコードを他の顧客に再利用し、その顧客の要件に合わせ追加のスクラッチ開発を伴うもの
- 特定の顧客向けに限定され、一般市場に販売されていないもの
- 業務プロセスに影響を与えるような大幅なカスタマイズが必要となるもの
- すでに導入済みのソフトウェア等の機能を追加・拡張することを目的としたもの(追加モジュール、アドオン、プラグイン等)
つまり、ゼロから作るシステムはITツールとして登録できないため、この制度の対象になりません。補助の対象になるのは、登録済みのITツールの導入費と、それに付随するオプション・役務(導入設定、データ連携、保守サポートなど)です。申請も、登録されたIT導入支援事業者との共同申請が必須で、事業者が単独で申請することはできません。
制度そのものが不利なわけではありません。会計ソフト、勤怠管理システム、販売管理システムのように、既製品で十分に足りる領域では有力な選択肢です。補助額は5万円から450万円、補助率は2分の1以内(最低賃金に近い水準で雇用している従業員が一定割合いる場合は3分の2以内)で、150万円以上を申請する場合は対象となる業務プロセスが4つ以上必要です。導入したいものが既製品なのか、自社専用の仕組みなのかで選び分けてください。
自治体のデジタル化補助(例:東京都 中小企業デジタル導入促進補助事業)
事業所所在地の自治体にも、デジタルツールの導入費を補助する制度があることが多く、下限額が低いため小さな案件でも使えます。ただし東京都の制度も、対象は市販のパッケージ製品です。募集要項は補助対象を「申請時点で一般に販売されているパッケージ製品のソフトウェア及びクラウドサービス」と定義し、スクラッチ開発のシステム構築費を対象外としています。
| 対象 | 都内の中小企業者等(会社・個人事業主・中小企業団体) |
|---|---|
| 補助額 | 下限5万円・上限150万円 |
| 補助率 | 2分の1(小規模企業者などは3分の2) |
| 対象経費 | 市販のパッケージ製品・クラウドサービスの購入費(ツール本体)と、その導入に伴う初期設定・カスタマイズ・運用保守サポート費(関連経費として上限50万円) |
| 対象外 | スクラッチ開発のシステム構築費、ゼロから開発を行うもの、汎用機器(パソコン・タブレット等)、OS・セキュリティソフト等の汎用性の高いソフト、調査・提案・打ち合わせ等のコンサルタント的要素を含む経費 |
| 募集 | 第1回は受付終了。第2回は2026年9月頃を予定 |
※上表は東京都の例です。制度の名称・金額・対象は自治体ごとに異なります。事業所所在地の自治体と商工会・商工会議所にご確認ください。
条件が付く・対象にならない制度
ものづくり補助金
「機械装置・システム構築費」が必須の対象経費に含まれるため、名前が挙がることがあります。しかし公募要領は「既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業は補助対象外です」と明記し、さらに「単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象事業に該当しません」としています。
つまり、社内の事務作業を効率化するだけの取組は対象になりません。新製品・新サービスの開発や海外需要の開拓を伴う場合に検討する制度です。
小規模事業者持続化補助金
この制度は「対象外」ではありませんが、システム開発費の扱いに強い制限があります。公式のよくあるご質問は「システムの購入や開発等に係る経費はウェブサイト関連費です」としており、ウェブサイト関連費は補助金総額の4分の1(最大50万円)が上限です。
また、制度の目的が販路開拓であるため、取組と販路開拓との関連を事業計画で示す必要があります。自動化開発の主な財源にはなりにくい一方、販路開拓の取組と併せて進める場合には使える余地があります。申請には商工会・商工会議所との連携が必要です。
申請の前に確認すること
- 交付決定の通知が届く前に、契約・発注・購入をしていないこと
- GビズIDプライムのアカウントを取得していること(発行までに日数がかかります)
- 窓口を確認すること。厚生労働省の助成金は都道府県労働局、経済産業省系の補助金は各事務局で、申請の様式も手続きも異なります
- デジタル化・AI導入補助金では、補助金の申請・報告に係る申請代行費そのものが補助対象外であること
- 予算の上限に達した時点で受付が終了する制度があること
- 実績報告と、その後の報告義務の内容を確認しておくこと
マワリエができること・できないこと
補助金・助成金の申請書の作成代行は行っておりません。申請の手続きそのものは、制度ごとに相談先が異なります。顧問の士業の方がいらっしゃる場合は、その方と連携する形がもっとも早く進みます。
| 制度 | 相談先 |
|---|---|
| 働き方改革推進支援助成金、業務改善助成金 | 都道府県労働局、働き方改革推進支援センター。有償の申請代行は社会保険労務士の業務です |
| デジタル化・AI導入補助金 | 登録されたIT導入支援事業者(共同申請の相手方になります) |
| その他の経済産業省系・自治体の制度 | 各制度の事務局、商工会・商工会議所、認定経営革新等支援機関、行政書士など。対応できる範囲や代理の可否は制度ごとに異なるため、事前にご確認ください |
マワリエがお出しできるのは、申請の根拠資料をつくるための材料です。
- 対象範囲と金額を記載したお見積書
- 対象業務の現在の作業時間と、削減が見込まれる時間の整理
- 想定している実現方法と、導入後の運用に関する説明
業務改善診断・AI/自動化設計では、対象業務ごとに現在の作業時間と削減の見込みを整理します。これは、多くの制度が申請時に求める「どの作業が、どれだけ短縮されるか」の説明とそのまま重なります。
補助金を使わないという選択もあります
数十万円規模の改善であれば、交付決定を待つあいだの数か月で失われる時間のほうが大きくなることがあります。賃上げや労働時間の短縮をすでに予定されている場合は、制度と進め方を合わせるだけで条件が揃います。そうでない場合は、先に効果を出してしまうほうが早いこともあります。どちらが自社に合うかは、対象業務と時期によって変わります。無料相談では、この判断の材料も含めてお答えします。
確認先(公式サイト)
- 働き方改革推進支援助成金(厚生労働省)
- 業務改善助成金(厚生労働省)
- デジタル化・AI導入補助金(中小企業基盤整備機構)
- 同・公募要領/ITツール登録要領(資料ダウンロード)
- 中小企業省力化投資補助金 一般型(中小企業基盤整備機構)
- ものづくり補助金総合サイト
- 小規模事業者持続化補助金(中小企業庁)
- 中小企業デジタル導入促進補助事業(東京都中小企業振興公社)
※本ページは2026年8月時点で公開されている公募要領・公式サイトの内容にもとづいて作成しています。制度の要件・金額・期限は変更されます。申請の前に、必ず各制度の公募要領と公式サイトで最新の内容をご確認ください。
補助金を使うべきか、待たずに進めるべきか。
対象業務の状況をふまえてご説明します。